鴻上了見はオタクなので大人気特撮映画を観に行く

 某年某月某日。
 これは二次創作の同人小説な上時事ネタもいいところなので詳細は省くが、鴻上了見と穂村尊、そしてその相棒たるイグニスの不霊夢は大ヒット公開中の映画、『シン〇ウルトラマン』を鑑賞しにDENシティ内のとある映画館へとやって来ていた。

「いや肝心なところが伏字になってないんだけど……大体何が悲しくてお前と映画見なきゃいけないわけ? 遊作と来ればいいじゃん……」
「穂村。 アイツは連れて来ても上映中ずっと私の顔を見ているから呼びたくないという話は何回もしているはずだが」
「あぁ~、そういや言ってたね、そんなこと……。ハイハイハイ、分かったよもう……。付き合ってやるから、せめてポップコーンとドリンクくらいはおごってよね」
 余裕をもって集合したため、入場まではまだあと二十分弱あった。 その間に了見が事前に予約していたチケットの発券を済ませた後は、2人で軽食を買うために売店へと向かう。 やはりこの映画を目当てに来ているのだろうか、館内は様々な客で賑わっていた。 親子連れやカップルは勿論、特撮マニアと思われる若い男性たち、仲睦まじく思い出話に花を咲かせている老夫婦……。 あの有名な必殺技のポーズを構えてはしゃぐ幼い兄弟、そして怪獣のぬいぐるみを愛おしそうにぎゅっと抱きしめている女の子まで。 そんな様子を見つめる尊もまた自身が小さかった頃を思い出したのか、口元が少し緩んでいる。 なんだかんだで、映画館という非日常の空間はこれから体験する物語への期待を膨らませてくれるものなのだ。
「でもさあ僕、もう特撮ヒーロー見てはしゃぐ歳でもないし……楽しめるかちょっと不安だな~。 やっぱ鴻上はさ、こういうの詳しいわけ?」
「詳しいなんてもんじゃない私たちがこの世に生を受ける遥か昔第二次世界大戦日本の敗戦から二十年後当時の人々の血と汗により生み出された真実と正義と美の化身その英雄譚を私は幼い頃から繰り返し繰り返し見てきたのだ日本の特撮の礎 (省略されています。全て読むにはこのリンクをクリック!) 氏両名による『シン〇ゴジラ』は成程確かに傑作という言葉がふさわしいだがそれとこれとは別だ私は甘い男ではないちょっとやそっとのことでは絶対に評価しないからな絶対にだ」
「アッハイ」
これは所謂「オタク特有の早口」というものだろうか。 ここで全てを記載するとなると途方もない文量になるほどの思い入れを僅か数秒で一気に捲し立てた了見は完全に目が据わっている。―― やっべえこわいコイツの前で下手な事言わない方がいいし近寄らんとこ――本能でそう悟った尊は思わず後ずさりしたほどだが、一方彼のパートナーはといえばデュエルディスクから顔を出して感心したようにうんうんと頷いている。
「往年の大ファン、というわけだな! ところで私もこの間Amaz〇nプライムで当時の作品を視聴したが、何十年も前に作られたというのに非常に完成度が高く驚いたぞ! 」
「フン……、 映画の鑑賞を前に過去作を視聴しての予習とは。 なかなか殊勝な心掛けではないか、炎のイグニス……」
「だからさっきからそういう伏字になってない伏字やめない? お前ら」
そうこうしているうちに館内に該当シアターの入場開始アナウンスが響き渡り、先ほどまでごった返していた売店付近も徐々に人がまばらになっていく。
「ほら鴻上、不霊夢。 早く行かないと始まっちゃうよ」
尊は特撮談議に熱中する2人に声をかける。 盛り上がってきたところ邪魔して悪い気もするけど、止めなかったらこのまま一生喋ってそうだしな……特に鴻上が、などと思いながら。
「ん? 何か言ったか? 穂村」
「何も言ってない、何も言ってないよ」
席に着くと間もなく場内が暗くなり、映画が始まった。ポップコーンの甘い匂いが漂う中、どこか不気味でサイケデリック、見たこともないはずなのに懐かしさが去来する、そんなタイトル画面と共に――。
 静寂の中、徐々に明るくなっていくシアター内。 尊はもう真っ白になり、何も映さなくなったスクリーンに釘付けになったまま動けずにいた。
「すごい……いい映画だったなあ……」
口から漏れ出た言葉。 どこからともなく同意の溜息が聴こえてきたのは気のせいではないだろう。 劇場内の皆が映画の余韻に浸っていた。 銀幕で繰り広げられた、空想特撮浪漫の世界。 観客たちは童心に帰り、老いも若きもいつの間にか心の底から主人公を応援してしまう……頑張れ、負けるな、僕らのヒーロー……と。
「いやあ面白かったあ~! なあ鴻上!」
これにはさしもの特撮オタクも大絶賛間違いなしだろう、素人目線でもそう確信しながら満面の笑みで隣を振り返った尊の目に飛び込んできたのは。
「うゆ……ぅ……うゅ……うぅ……そんなに……そんなに、にんげんがすきになったの……?」
「うわ?! な?!何?! 何お前泣いてんのかよ?! え? こわ!! こええよ! なんで?! 泣くほど?!」
何事かを呟きながらスクリーンを見つめ、滝のように涙を流す鴻上了見の姿であった。 ――その日、彼がパンフレットにデザインワークスは勿論、劇場内で販売していた関連グッズは全て購入していったことは言うまでもない。
 数日後の昼下がり、カフェナギにて。 そこにはやつれ果てた尊の姿があった。
「僕もう二度とアイツと一緒に映画見に行きたくない」
「そうか? 私は彼のあの映画に対する情熱は聞いていて飽きないと思うが……」
首を傾げる不霊夢の言葉に尊は力なく項垂れる。
「そんなこと言うなら不霊夢が代わりに相手してあげてやれよぉ……確かに面白かったけどあれから毎日ずっと映画の話に付き合わされてさすがにマジで苦しい、死にそう」
呻きながらテーブルに突っ伏す彼を労るようにアイスコーヒーを差し出しつつも、遊作はどこか羨ましそうに尊を見つめ、問いかける。
「尊……了見は以前一度だけ映画を共に見に行ったきり俺のことを誘ってくれないんだ……。 どうしたらまた一緒に行けるだろうか?」
「うんそうだね、とりあえず上映中は集中して画面だけ見るようにした方がいいと思うよ、僕のためにも……」
よく冷えたコーヒーの優しい甘さが疲れきった体と心に染み渡る。そもそも僕がこんな目にあってる元凶は遊作なんだよなあ~、などとは言えない尊であった。

あとがき

以前くるっぷ利用していた際に投げといたネタをきちんと肉付けしました。さすがに「対象物:」されたくないので小説タイトルでの言及は避けました。弊サイトでは鴻上了見がオタクな設定です。まあだってノリノリで「対閃光防御!」とかやってる男がオタクじゃないはずないんだよなぁ……って思ってるし……。あと実際に使用モンスターの1体で牢獄にぶち込まれてるトポロジックガンブラーの効果使用時とかのSEが変身グングンカット時のSEと同じらしいし絶対にオタクでしょ。正体現したね。
あと絶対にコイツクソめんどくさいし懐古趣味タイプのオタクだから昭和のシリーズは全部観てると思うしクッソ上から目線の厄介批評家気取りで観に行くし終わったらキラキラした目でシアターから出てきてパンフとデザインワークスとかその他お土産買えるだけ買って帰ってくると思うし三騎士とスペクターにも一生映画の話してると思うしよかったね!って笑顔で流されてる。付き合いの長い身内なので扱いに慣れていると思う。あと絶対に尊は会議のシーンとかで寝てるタイプだと思う。