どうなった、と続けるはずだった私の目に映るのは、机に伏している恋人。 電子の海を巡るハッカーも、今は夢の世界へと船出というわけだ。 顔を覗き込む。強い光を湛える翡翠の瞳は閉じられ、なんともあどけない。 無防備な寝顔が悪戯心をくすぐった。
「ね、起きて。 私の王子様」
そう耳元で囁いて頬に軽くキスした途端に、耳まで真っ赤になって飛び起きるキミ。 どうやらすっかり目が覚めたようだな。
『人魚』
金の瞳は爛々と輝き、クスクスと笑う様はさながら獲物をいたぶる肉食獣だ。
「やはりここ、だな」
俺を組み敷いたリボルバーから唇へと喰らいつくようなキスを施されると、このまま骨の髄までこいつに貪り尽くされるのも悪くはないな、とさえ思う。 だが生憎、狩場にいる飢えた獣はお前だけじゃない。 口づけに応えて肩に爪を食い込ませると、熱を帯びた吐息が聞こえた。
『獣たち』
「だから?」
「いや、その、俺の気持ちを受け取って欲しいと……」
「それで? こんな虚像の花束で私が喜ぶとでも? くだらない物を用意している暇があれば他に有意義なプログラムの二つや三つ作成できるだろう」
目に見えて落胆しているプレイメイカー。 少しばかりキツく言い過ぎたか。 大方闇のイグニスの入れ知恵といった所だろう。 ――そんなことをせずとも、私の心は既にキミのものだというのに。
『Ur boi』
「違う。 了見に似合うと思って」
はーん、道理で今日は帰りが遅かったワケだ。 ところで。
「あのさあソレ、もしアイツの趣味じゃなかったらどーすんの? アクセサリーのプレゼントって割と難易度高いんだぜ?」
オレの言葉に完全に固まる遊作。 「今初めて思い至りました」って顔だ。 まあアイツに限って突っぱねるなんてこと無いだろうし、元気出しなよ。 な!
『贈り物の行方は』
「構わん、草薙さんの屋台で手伝いがあったのだろう。 それに私も今来たところだ」
絵から抜け出てきたよう、というのはまさにこの事だろう。 深い藍色の浴衣に身を包み、悠然と佇む了見。 夕闇を彩る提灯の灯に照らされて一層艶やかな恋人の姿に、遊作の口から微かな嘆息が漏れた。
「綺麗だ」
「ふふ、何だ。 惚れ直したのか」
返事の代わりに遊作が寄越したのは、祭りの熱に浮かされたようなキスだった。
『祭』
「リボルバー、例えこの世界で何があろうと俺はお前を……」
「プレイメイカー……」
ずーっとこの調子で全然冒険が始まらないの!私たち、一体どうなっちゃうのお〜?
『運命の旅路』
あとがき
文章力の向上を少しでも目指すというか、妄想の出力をすることに慣れるために始めた毎日200字で短編書いてみることによる作品が結構出来てきたので、その一部を上げてみることにした。やってみることで、今まであった「照れ」みたいなのがかなり薄れてきた気がする。まあ恥ずかしがってたら毎日出来上がらないからな。自分が何を書きたいかとかが少しずつ見えてきた気もする。あと単純にまだまだ慣れてないせいもあるだろうけど1日という単位ですら遅筆であるということはもう受け入れざるをえない気がしてきた。それとタイトル考えるの苦手過ぎるな。どうしようこの先。ここに書いてる途中で気づいた修正点はおいおい直していきたいけどとりあえずは「1日で書いたときそのままの状態」を維持しておくことに。この後は一応各話の簡単なあとがき的なコメントを書いてきます。もし一つでも気にいっていただけたものがあれば幸いです。