漫画『私のジャンルに「神」がいます』感想


※割とネタバレを多分に含みます。

Twitter連載時のタイトルは『同人女の感情』。
Web連載の時のタイトルの方がなんとなく個人的には好きです。読み返したら感想というか紹介文になってるけどいいか...。 この作品の好きなところ、たくさんあるんですが、まず読んでてテンポよく面白い! オタクの女の日常や悩みをテーマにした作品はほかにもあるだろうけれども、オタク女の周りの良識ある人々()が登場して
「いい歳していつまでアニメとか漫画に夢中になってんの?」
だの
「結婚は??彼氏は???」
みたいに責めてきて
うるせ~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!
知らね~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!

と、読んでるこっちがキレそうになるようなことはまずないので、個人的にはそこも評価ポイントです。
この漫画は基本的には同人活動、二次創作してたり読み専だったりする腐女子あるある?話の コメディ、笑いあり涙ありの感動作、だと思います。出てくる女の子たちもみんなかわいらしい。
1話完結形式で、才能あふれる字書きさんである女性(HN:綾城さん)の作品に魅せられ、 時に嫉妬にかられて狂っていくオタク女たち…。漫画の中でちょいちょい出てくるオタク女相関図は必見。
私はあまり絵も描かないし文章も書けないしでいわゆる読み専のオタクなんですが、 仲よくさせていただいてる人が原稿や創作で悩んで苦しんでたりすると
「めっちゃ応援したい……、でも私なんも産み出せないしそんな何もしない奴から応援されても邪魔かなあ…」
とか悩んでたりもして…。 一番いいのは自分でも創作することなんですけど、
「どうせ下手糞だしなあ、書いても誰も反応してくれなさそうだし」
って勇気が出ないし。 ただ、そんなうじうじな私も、なんか書いてみようかなあ、作ってみようかなあ、と思ったりするくらいには、 この漫画が持つ
「創作って楽しいんだ!!!!」
というパワーあるメッセージをめちゃくちゃに感じました。
好きなエピソードは…正直全部好きなのですが、まずピックアップして感想書きたいのは、 文章を書くことが全くの初心者だった読み専の女性が0件だったジャンルを1件にする話、ですね。
主人公のたまきさん、自分が萌えたジャンルの二次創作探して0件だったのを、幼馴染にそこまで妄想を考えてるなら自分で書いてみれば、といったことを言われて
「そっか自分で書けばいいじゃん」
と素直に意気込んで(実は彼女はまず無理無理カタツムリwwwwwとか言わないで 素直にそう思えることがすごいのだが)、ウッキウキで初投稿した作品のブクマが 丸一日たっても0件だったことにそんなことある????してるとこがなんかかわいい。 いやあ私も彼女くらいの根気と度胸が欲しい…。
作者さんのインタビューもネットで拝読したのですが、
「実際に初心者が文章を書くにはどういう練習をしたらよいか」
というリサーチや実践など、漫画にするにあたってきちんと裏付けをされたようで、作中のたまきさんが行った
800字の小説を毎日書いてアップロードするという手法は、明確なゴールを設定したり、簡単すぎでも難しすぎでもない、クリア可能な課題という面でもどうやらかなり効果的のようです。また、必ず完成させることがやっぱりキモみたいですね。 私もたまには絵描いてますが、描いてる量はそう多くなくても、1つの作品を時間がかかってでも完成させてくと なんだかんだ上達はしてる気がします。
あとはまあこれも、耳が痛いしブッ刺さりまくるんですがこの話の主人公のたまきさんの 幼馴染の
「出た、もっと上手くなってから」
っていう、なかなか練習した成果物を投稿サイトに上げる踏ん切りがつかないたまきさんに放たれた言葉…。
そう、創作の世界ではたとえドが付くような下手糞であろうと、数を増やした者、投稿した者、完成させた者が正義。 達人にでもなるのを待ってから戦場に出るとかいう気の長ェことは言ってられんのです。 わかってはいるんだけどね…。無事にたまきさんはこの後作品をアップしブクマをもらいます。
ところでこの漫画、創作者と、その創作者を応援する人、の関係があちこちで出てくるんですよね。 たまきさんと幼馴染、ジャンルから人が離れていく悩みを持つ友川さんと長年のフォロワーみつばさん、 そしてなによりこのシリーズ通して様々な場所で顔を出す綾城さんとおけけパワー中島。
描きおろしでは作中で圧倒的カリスマを放ち人知れず周りを翻弄する綾城さんの過去が描かれるんですが、 これを読むといかにおけけ中島が綾城さんにとって大切な人物かってなるんですよね。 憧れていた人に影響を受けて始めた創作活動なのに、よりによってその人に疎まれてしまう…、と、 綾城さんの気持ちを思うとしんどいのですよ、この話。
そんな中で「せっかく夢中になれることを始めたのに、やめないで!」
「創作をしていて、楽しそうにしているあなたが見たい!!」
って声をかけてもらえるのは、やはりすごく嬉しいだろうなあと。 いやこれ書いててマジで尊いなってなったんだけど多分おけけ中島さん、綾城さんの作品はもちろんだろうけど、何より 楽しそうな綾城さんが見たいんだよ。いや~何???愛じゃん...。綾おけです。
私は綾城さんに横恋慕(語弊)(でも語弊じゃないと思う)している七瀬さんがめっちゃ可愛くて好きなんですが、 もうこの書き下ろしを見ちゃうと
「やべえ七瀬どう考えてもノーチャンやわこれは、諦めろ」
ってなりますね...。
残念ながら作品はまだまだこれからも盛り上がる、というかいくらでも話作れるじゃん?!;; ってなったところで連載が終わってしまったのですが、まだまだ彼女たちの物語は続いていくのだろうと思います。 本編では描かれてませんが、きっと七瀬さんは気づいてないか、またはまだ出会ってないだけで、彼女にとっての おけけ中島さんみたいな人もいるんだろうなあと思ってます。そしてまた七瀬さんもかなり実力者であることは 描写されてるので、すでに七瀬さんは誰かにとっての綾城さんなのかもしれない…。 はたまた、いつか綾城さんを追いかけるのをやめ、友川さんみたいに自分の作品が自分にとっての神作品、であることを 感じる時が来るのかも。
まだまだ私もサイト立ち上げたばっかりですが、そのうちに、昔憧れた様々な個人サイト様やピクシブ、イベントで 出会った数々のご本で見てきたような創作物を自分でも作ってサイトに置けたらいいなあと思っています。