映画『シン・ウルトラマン』感想


※当然のことながらネタバレ全開なのでご注意ください。

ようやく感想をまとめることになりました。映画を初めて観に行ったのは2022年5月22日、2回目が同年6月6日。 初回の時は本当にこの映画を思い付きで観に行ってるんですけど、その理由が遊戯王の日の抽選に落ちたってのがメインなんですよね……。 あとはなんかめっちゃ話題作になっとるじゃん……、まあなんだかんだで庵野さん絡みの作品だしな……。みたいなしょうもない理由です。ただ結果的には見てよかったな~って 心から思った良作でした。 ちなみにウルトラマンに関してはほぼミリしらでボンボンで『ウル忍』読んでたくらいですね……という有様でしたが、一方で今回脚本メインでやってる庵野さんの作品はそれなりに結構見てる方でした、 『王立宇宙軍 オネアミスの翼』、『トップをねらえ』、あと『エヴァ』旧劇と『キューティーハニー』実写と『シン・ゴジラ』。さすがに『オネアミス』と『トップ』は1回しか見てないせいでかなり記憶薄れてはいますが……。 見た結果めっちゃハマってしまい、2周目は某ゴジラの拝める映画館に行ってしまったほどです。1回目はパンフ完売で手に入らなかったしね……。完全に余談ですがここ、 周りがキャバとかホスクラばっかなんですけど、すぐそばにペットショップがあるのがマジで闇だと思いました。

以下から日記に記していた内容を整理し直してまとめたものになります。

まず、映画全体の印象を先に。
「庵野さんこんな明るい大衆娯楽映画作れるんだ……」
というのが初回の率直な感想でした。いやシンゴジが暗いわけじゃないけど……。いや暗いか……。 というか未だに私の中で「庵野秀明」といえば『The End of Evangelion』の壮絶さと直結してる感じあったので……。 まあ庵野さんは今回あくまで脚本などがメインで最終的な監督は腐れ縁感のある樋口真嗣さんになっているので、そのへんもあるのかな~とは思いますが。 あと全体的な空気の違いはやっぱりいまや「災厄の象徴」であり「人知を超越した神」と等しくなったゴジラと「地球人を守る英雄」でありながら「あくまで人間と同じく限りある命を持つ存在」では主題も描き方も違ってくるということかなと。かなりコメディ的なシーンも多かったんじゃないかと思います。ストーリーや人物の描き方には賛否あるみたいだし、私もこれ海外出すならちょっと削るシーン出てきそうだな~とは思いましたが、それでも笑いあり涙あり、ほろ苦いエンドの娯楽作として収まっている印象です。
予告で意味深かつ不穏な感じで見せていたウルトラマンの正体はもっと引っ張るかと思いきや、結構序盤であっさりバレて拍子抜けしましたけど、それがかえって後半まで響くトラブルになるとは思いませんでしたね。

続いてウルトラマンまわりで感じたことや登場キャラクターに関して思ったことを。
「神永さんがウルトラマンになる」ってことを知ってる上で見ると明らかにウルトラマンとの融合後に言動が変になってる気がするんですけど、なんで誰も気付かんのか……?(クッソ序盤に融合するからその前のセリフが少ないこと考慮しても変だよ……)まあ子どもを自分が保護しに行く(これ自衛隊か警察の仕事では……)って言いだしたときも班長が特に何も言わんし普段から単独行動多い変な人扱いだったと考慮すると気付かれなかったのかもしれませんね……。いや、2回目見るとウルトラマン知識が乏しいなりに前回気づかなかったとことかにも注意向いていいね……。ウルトラマンことリピアとの融合直後の神永さんのデスクに本が山積みになってたけどしばらくすると片付いてたりとか。ウルトラマンが人間のことを勉強してるという描写でもあるけど、うず高く積まれた本が壁のようになっている様はウルトラマンと人間との間にまだまだ隔たりがあるみたいなのの象徴かもしれないですね。
浅見さんのウルトラマンを初めて生で見た時の感想、「綺麗」ってのがいいよな……ってなりました。映画を見ている我々はメタ的な視点で強そう、とかカッコイイとかを一般的にウルトラマンに対してイメージしてると思うんですけど、彼女は何より先に「美」を認めてる。禍特隊で最初にウルトラマンを見た3人は恐らく「正体及び飛来目的不明の巨人」に対してともすれば不気味とか恐ろしいって気持ちもあっただろうに、ちょっと遅れて合流した彼女は最初から巨人に対してプラスのイメージを持ってるのがめっちゃいい……。一方で同僚の神永さんには「気が利かない男」とかマイナスイメージを持っていて「コミュニケーションがとれていない」のに、ウルトラマンは間違いなく人間を守ってくれてる!アイコンタクトしてくれた!って気づくところも、最初は正体不明のヒーローのお約束ですよね~。そう、シンのウルトラマン、美しいんだよな……。庵野さんがウルトラマンに対して抱いているイメージを昇華した存在というか、すげー悪い言い方しちゃうと二次創作する上でオタクがつい推しを余計に美形化するアレに近いかもしれないんですけど……。
劇伴、前半は原曲とそのアレンジ使って、メフィラス星人登場あたりから鷺巣詩郎さんの担当になってるっぽい?いや~、やっぱここのメフィラス戦闘シーンの曲、ほんとカッコ良すぎるんですよ。2回目見に行った時も半分はこれを聴きに行ったようなもんでした。前半の昭和の妖しくサイケでレトロフューチャーな響きのサウンドがあるからこそ、令和のバリバリデジタルサイバーオーケストラロックサウンドとの対比がそれぞれをより引き立てるって感じが……こう……伝われ。鷺巣詩郎、私の好きな音楽家です。
デザインワークスもこれからじっくり見るつもりだけど、山下いくとさんのラフ画とか見れるだけでもめちゃくちゃすごい。メフィラス、多分やっぱ制作側もお気に入りキャラなんじゃないかなー、デザインにかなり試行錯誤したのか8ページくらいのボリュームありました。オリジナルのストレートなリファインだけでも通用しそうじゃん!って思ったんですけどそこから更にスッとしたデザインにもってくの凄過ぎる。あの耳みたいな部分がやっぱチャームポイントなのか。ここだけはほぼずっと残ってますね。人気は出るべくして出たキャラだと言えるでしょう。
あとシンウルトラマンで地味に好きなモブキャラ、(モブじゃないっちゃモブじゃないけど……)やっぱ防災大臣のおじさん……。「私は人を見る目だけは確かだったんだが……」って悲しそうにしてるシーンで思ったけど、それだけで防災大臣になれないだろうから(人望もあるんだろうけど)やっぱ隠れて相当有能なんではないでしょうか?多分ザラブ星人も防災大臣おじさんに「横須賀のは別人に見えるんだけど……」って言われたときちょっとドキッとしてたりしない?日本への来訪理由について浅見さんに「ウルトラマンがいたからじゃないのぉ?」って図星つかれた時に黙ってスルーするところがいいし、ムッとしてる浅見さんもかわいい。
あとクッソどうでもいいんですけど神永さんも名前がシンジじゃん、ってことに気付いてから

シンジ君!!ウルトラマンになりなさい!!聞いているのシンジ君!!ウルトラマン!!ウルトラマンになりなさいシンジ君!!でなければ死になさい!!

ってミサトさんが脳内に出てきて大変でした。 もう駄目だ庵野関連の作品全てがインターネットミームに汚染されているようにすら思える……。総理大臣の「ウルトラマンが……敗北……」って絶望感たっぷりのセリフ改めて聞くとやっぱ絶対に負けるはずのないウルトラマンが倒れる、そんなのありえないって思ったのかな……。なんでシンジなんだろうなー。シンジ君の名前が樋口真嗣さん由来らしいことは割と有名だけど偶然被っちゃっただけなのかも。

個人的なここすきポイントをいくつか。気合い入れるときのセルフケツドラムがクセらしい有能お姉さんの浅見さん。もっとクールかと思いきや思いっきりギャグ要員かつ結構ヒロインでした。そういや病室で二人きり、っていうのはエヴァ旧劇冒頭と同じだ、っていうのは後から気づいたんだけど、シンジくんはメンタルがやられまくってアスカ助けて……ってなってたけど浅見さんはみんなが頑張ってる、だから目を覚ましてと励ましてるのが……なんかこう……来る。
あと怪獣に趣味でどこかかわいい?名前つけちゃう防災大臣(だったと思う)かつ早速ウルトラマンのファンになってしまったらしいおじさん。にせウルトラマンもよく見たらちょっと目がカクカクしてるのね。偽物の美学。アクションとか怪獣プロレスも派手なので楽しく見れました。多分ウルトラマンをもっとよく知ってたらもっと楽しかったんだろうな〜と思うとどうにも薄い感想になってしまって悔しい!あとやっぱ庵野を感じさせる画が好きだくらいしか言うこと無くなっちゃう……。ブランコとか遊具のシーン、旧劇のシンジの精神世界みたいなのちょっと思い出しました。ていうかブランコがモチーフとして好きなのかな。今度調べてみようかな。この映画でのウルトラマンの宇宙人というか外星人としての異質さをやや強調した感じ、結構好き。 なんかデザインがすっきりしている?と思ったらカラータイマーは無くて、色が褪せてく感じで地上での活動限界を表現してるっぽいですね。あと思いっきり「ゼットン」って鳴き声のゼットン。このゼットン、もとは怪獣だったと思うんですけど(私ですら名前とビジュアルを知っている)今作はウルトラマンの星から持ってきた異星のロボットという設定にしたんだね。そっか、地球から目視できるからそりゃでかいわな……。見てる途中、え、これ倒せるのか?→無理でした……からの普通に負傷→入院(ウルトラマンも入院するんだ……って困惑した)はマジ見ててどうすんだよこれ……ってなりました。『ぼくらのウォーゲーム!』でひたすら増え続けるディアボロモンと似たような、静かな絶望感。ゼットンが見える中で続く人々の日常も相まって見てるこっちが打ちのめされてしまう。でもそっから頑張ってなんとか打開策を見出すのは本当に熱かったです。
時々映る科特隊のマスコットがなんかかわいかった。あとやっぱウルトラマンが凄くかっこよくて、全然ウルトラマンのことなんか知らないのに応援しちゃうんですよね。ザラブ星人と戦ってて危うく道路に叩きつけられそうになって踏ん張って空中でブレーキかけて追いかけてったウルトラマン。放射性物質廃棄処理施設に怪獣の攻撃が当たらないようにヒヤヒヤしてるウルトラマン。目線や動きだけで人間への優しさを感じせたり、被害をなるべく出さないように戦ってるんだなって分かるところ惚れちまうやろ。あと正体がまだバレてない時に怪獣と戦い終わって状況的に1人バックレてたようにしか見られないだろうにニッコニコで仲間を出迎えててって顔されてるとこすき。
あと最後にゼットンを倒す(正確にはめっちゃ頑張って一瞬のタイミングで次元の狭間に送り込むだけっぽいですが)ときに30秒のカウント映ったの、旧劇の「瞬間、心、重ねて」のイスラフェル戦思い出しました。 あとこの世界の日本、怪獣倒し過ぎで強すぎて笑うけど日本こわれる。東京氷河期!じゃないが……。何故か日本にしか出現しない。そういう世界なんだよな。押し切っていこうな。(この世界線では禍畏獣、シンゴジと繋がっていそうで繋がっていない世界。何人かシンゴジにいましたよね?って人も出演してたな~多分) あとは一部シンゴジで使われてた音楽のアレンジもありましたね。やっぱ鷺巣詩郎さんの音楽好きだ~。
劇場入る前、ウルトラマンのソフビ握っているような小さいお子さんや家族連れもたくさんいたけどはしゃいだり騒いだりって音は聞こえなかったので、よっぽど夢中になってたか、寝てたかのどちらかだと思います。前者だといいね。ていうかその年でこの映画を劇場の大スクリーンで見れるの、普通に羨ましいよな~。
ウルトラマンというと、オタクさんのブログのこの記事もぜひ読んでほしい。円谷プロが当時これを知ってたかは分からんけど、本当にウルトラマンですね。なんか素敵。

さて庵野さん、今やめっちゃ予算貰えるようになったろうし、『シン・仮面ライダー』(祖母の故郷の関係で石ノ森章太郎先生の絵が結構好きなので、本当に漫画の雰囲気そのまんまの映像がもう既に楽しみ過ぎる)に続いてまだ企画あるとしたら、またキューティーハニーやってもらえん?もう無理?やるとしたら同じ永井豪作品でもデビルマンかマジンガーかもな……。話を聞く限り原作に割と忠実なはずなのに日本映画の恥として語り継がれる実写『デビルマン』、もう一度映画にする価値はあると思うけどな……。まあエヴァ自体がデビルマンの同人アニメみたいなもんだけどさあ……。
さてこれで感想だいたい書き終わったしもう他の人の感想見れるな!って見に行ったらそういやそこもあった〜って色々気付かされますね。いやー見てよかったな。 色々ありましたけど、感想探す中で「本当にウルトラマンが拉致された」、「絶対に負けるはずのないウルトラマンが倒れる そんなのありえない」という感想は何度見てもどうしてもめちゃくちゃ笑ってしまう。予測回避不可能。

おしまい