映画『ザ・フラッシュ』感想

※ネタバレ普通に全開。

タイムトラベルものというか、ヒーロー映画だけどかなりSF色が強い気がした。

『ザ・フラッシュ』を見るにあたって色々調べたけど、そもそも昨今流行しているというか、もはや一般的なジャンルと化している気もする「マルチバースもの」ってフラッシュが元祖なんだってね。ちなみに『ソニック』実写映画一作目にもソニックがフラッシュのコミックスを目にも止まらないスピードで読んでいるシーンがあるけど、これはフラッシュが「超スピードで敵を倒すヒーロー」だからだろう。このシーンめっちゃ好き。可愛い。あとみんな『ソニック』映画を見ろ。人によっては『フラッシュ』よりオススメできるまであるぞ。
さてこの映画、本国では主演俳優の起こした事件もあって評価は芳しくないらしい。でも、なんていうかこう、その事件を抜きにして作品だけに焦点を当ててみると、物語の結論として「たとえ苦しくても運命は変えることができない、そしてそれを受け入れることが重要なのだ」みたいな流れになるので、そのメッセージをどう受け止めるか、という点が大きい気がする……。
日本人はさ、ほら、『時をかける少女』とかも人気だし、好きじゃんそういうテーマ。受け入れる土壌があるというか。でもさ、多分だけど、いやこれだいぶ偏見も入ってるだろうけど、アメリカの人って「え? 何? 結局お母さんは助からないってことになるの? 主人公は何も変わらない、元通りの世界になる未来を選ぶの? 『結局スタート地点と何も変わらない未来に戻りました~』って……。じゃあ一体俺がここに座ってた2時間は何だったんだよ?! F〇CK!!」ってなった可能性もあるな……?
いや実際に「百パーセント同じ世界に戻ってきたわけではないよ」って終わり方ではあったけど……。続編作る気満々だったんだろうけど……。結果は悲惨だったらしい。ていうか、2023年は全体的に超がつくほどの大作映画が超がつくほど大コケしまくっている年らしい。ヤバい。
真面目な話、ドラマ版で先に話の予習とかしておけばよかったな……というのが正直な感想。ネットフリックスで見れるし。あとこれ、今年観た『ビースト覚醒』にも言える話なんだけど、本来フィーチャーすべき主役がいまいち目立ってないというのは問題だと思う。「フラッシュ」の映画なのにバットマン活躍し過ぎやねん。いやまあマイケル・キートンのことみんな好きなのは分かりますし一応フラッシュことバリーもきちんと活躍の場はあるし、そういうシーンがめちゃくちゃ私の好みにではあったんだけど……。

こっからほんへについて。
彼は偶然にも自分の能力を応用することで過去に遡れるということを発見して、母を殺害したという冤罪をかけられている父を、何より無情にも命を奪われた母を救うために過去の出来事に干渉する。さあこれで母を救えたということを確信したうえで元居た時代に戻ろうとしたが、時空の狭間で何者かに襲われ、全く別の時代に不時着してしまう。そこでちょうど別の時空に存在している自分と出会う、いうのが大まかなあらすじ。
バリー、お前マジで人生ハードモード過ぎだろ……って感じだし、これではコミュニケーション下手な陰キャになったのもやむなしって感じだ……。別の時空の自分がいかにも駄目そうな陽キャ大学生だったの見てだいぶ戸惑ってたのが面白い。ちなみに元の次元のバリーは父の冤罪を晴らすために、科学捜査班として仕事をする一方で証拠や事件についての手がかりを探し続けている秀才という感じ。能力を手に入れたのもその執念がきっかけみたいなもんらしい。境遇が境遇なんだろうけど、めちゃくちゃ努力家だな……。
バリーは途中で自分の超人的能力を失ってしまうんだけど、それでも地球に侵攻してきた悪質異星人ゾッド将軍と戦うために、とっくの昔にヒーロー引退して隠居生活していたバットマンを探して協力を仰ぐし、(ゴッサムが世界一安全な都市になったので引退したという理由がまたパラレルもののお約束と言えど笑える)危険な場所に飛び込んで行って捉えられていたカーラを救い出そうとするんだよな……。例えスーパーパワーが無くたって「誰かを助けようとする」という姿そのものがヒーローなんだというのが、バリーと入れ替わるようにして力を手に入れ、はしゃぎ回ったりピンチに動揺していた別時空のバリーとは対照的だった。
ただ、その別時空のバリーもバットマンや、何より命がけで再び能力を獲得しようとするバリーを間近で見て正義に目覚めるのが良かったな。

正直、この映画の真のラスボスは最初にチラ見えした時点でなんとなく予想ついてたので、あんまり驚きはなかった。でも「時間は遡れても自分の老化自体は止まるわけではない」というのが盲点だった。「過去を修正しようとする」恐ろしさと醜さ、そして傲慢さの擬人化みたいな存在だな。

一見ちゃんと予算より売り上げてるようには見えるんだけど、なんと映画が興行的に成功するには予算の2.5倍の売り上げが無いといけないらしい。映画ってただ作るだけじゃなくて宣伝費とかも嵩むからね。恐ろしい話よ……。その上今どき口コミとかで映画の評価も丸わかりだし、何か人々の価値観が劇的に変化して再評価の流れでも来ない限り、配信での売り上げも厳しい日が続くだろう。ひえ~。多分DC漫画や映画のファンだったら大喜びするような小ネタとかいっぱい散りばめてあったので、ただただ残念。

おしまい