最高。
いやもうほんと、冗談抜きにすごく良かった。多分2023年でベスト。この映画をお勧めできる人種は、AKIRA好きな女とか、ニンジャヘッズとか、その他アメコミ好きサブカル好き人外好き諸々。日本をはじめとしたサブカルの影響を随所に感じる雰囲気がクール。『シン・仮面ライダー』でも描かれていた、人間と異なる存在の悲哀がバチバチにカッコいい作画と愛嬌あるキャラクターが暴れまわる中、シリアス過ぎない程度の塩梅で描かれてました。あと色々と「間違ったニホン」が好きな人は見た方がいい。余談だけど、なんか、途中で薄い本みたいな展開になったシーンあったけど見ていてめちゃくちゃ焦った……。
ヴィランとして登場したスーパーフライ、原作にもいるのかと思ったら本作オリジナルらしい。さて、スーパーフライはなぜ「ハエ」モチーフなのか?
蠅といえば、悪魔の王であるベルゼバブが有名。このあたりは多分絶対に意識していると思う。ていうか別件で同時期にブラックカルチャーについて調べてたら『スーパーフライ』というドンピシャの名前の映画があった! ブラックスプロイテーションというジャンルで、ひょっとしてこっからも来てる可能性もある。
なにせ蠅のミュータントであるスーパーフライは突き出た口とムキムキマッチョ、アフロヘアとこれでもかってくらいあからさまに人種的な特徴を戯画化したキャラクターなのに、(見てるこっちが「これ怒られないのか?! 大丈夫?!」って勝手に心配になるレベル)もんのすんげえカッコいいのよ。徹底的にワルで冷酷、粗暴なのにカリスマ性がある。同胞を彼なりに大切に想っているのに、暴力と恐怖、抑圧による支配になってしまう悲しいキャラクター。そんな彼を見てタートルズ達の父であり師匠であるスプリンターが己の姿と重ねるシーンがしんどいし、最終決戦のシーンもめちゃくちゃ感情移入してしまう。
特に好きなシーンは無人のダイナーでスーパーフライがタートルズたちに人間を半殺しにした時の話を聞かせてるところ。彼がテーブルを拳で叩きつけるとケチャップがべっちゃべっちゃ飛んでまだティーンエイジャーでしかないタートルズたちの顔にかかる。直接的な暴力シーンは描かれていないのに、「本当に半殺しで済ませたのか?」と疑いたくなるような残虐さを想起させるの、最高。
ところでこの映画観たら見事にアイスキューブさんのファンになって帰ってきてしまった感ある。アルバム買っちまったよ。『The Predator』です。『ビースト覚醒』のときもビースト目当てで行ったのに帰ってきたら一生ミラージュの話してるみたいなことになったけど、最近そういう事故みたいなハマり方多すぎだろ。ていうかそんなこと言ったらソニック映画もそうだったわ。完全に事故。 特に気に入ったトラックである『Dirty Mack』を延々とリピートしながら思ったけど、映画での演技見る限り、この人の声質多分三十年近く前にアルバム出した時からほとんど変わってないんじゃないだろうか。ずっとこんなパワーある声出せるってすげーなおい。
とにかく、タートルズたちをはじめ、ネズミ、蠅、トカゲ、エイ、コウモリその他と、人間から忌み嫌われる容姿の不衛生な動物だったり、有毒の動物だったりがモチーフのミュータントがわんさか出てくるのが、マジモンのマイノリティ根性というかガッツを感じる。次回作も出るっぽい終わり方だったけど期待していいんだろうか。期待しちゃう。
おしまい