新クトゥルフ神話TRPG非公式シナリオ『狂気山脈~邪神の山嶺~』セッション参加感想

色々と濃い内容のセッションだった。
セッション日は2023年5月13日土曜日でした。

狂気山脈~邪神の山嶺~



今までのセッションと違うのは、探索者を作るにあたって3つのハンドアウトがあったこと。しかもそのハンドアウトからさらにPLはAかB、どちらの設定を探索者に組み込むか選ばなくてはいけないという。今回PLは「還らぬ友」を選んだオタクさんと、「孤高の人」を選んだカメさん、「隠匿された真実」を選んだ私の3人。それぞれ狂気山脈に行ったまま消息不明の友人を探したい岩峰徹さんことガンホーさん、まだ若いのにピオレドール賞を受賞した登山家の鑑みたいな神峰匠くん、そして私は明らかにヤバいところに首を突っ込みたがっている動画投稿者兼登山家のウィルというキャラをそれぞれ準備して出発! 最終的に「この人たちと行けてよかったな……」って心の底から思った。
以下からセッション内容や感想など。当然ネタバレ注意。

自分のキャラ説明って必要なのか? って思うけど、多分このセッションを振り返る上では重要なので紹介しておく。
上でも書いたけど、ウィルのフルネームはウィリアム・ヒルといい、登山家兼動画投稿者。PLの中では今回唯一白人系の人間でニュージーランドの出身。なんでこういう設定にしたかというと、このシナリオの発端のひとつが「南極飛行観光旅客ジェット機が謎の失踪を遂げた怪事件」だから。あと個人的にだけど学生時代にニュージーランドにホームステイしたことあって思い入れあるし。
というわけで、「ニュージーランド航空に勤める友人から噂を聞いて『面白そ~』という不純な動機かつ野次馬根性丸出しで登山に臨む動画投稿者」というどっから見ても死亡フラグしかないようなキャラクターが出来上がった。
でも今回はプロフェッショナルが集まるということもあって、キラキラインフルエンサーなだけではなくちゃんと実力もある――という塩梅にめちゃくちゃ苦労した。しかも同卓のカメさんの匠さんはマジでめちゃくちゃ真面目でガチ実力派な好青年だし、ガンホーさんは大ベテランでステータスの何もかもが頼もしいしで、お二人のキャラシ上がってきたときはリアルに悲鳴が出た。そんなこんなで、ウィルはこのセッションを通してすごい思い入れの深いキャラになってしまった。

ほんへ開始。
事前にラグナさんから「ガンホー呼びでいいよ」ということとPL同士の呼び名についても言及あったので、卓を始まる前に話し合いで決定。
開始前に改めて設定読み直しとメモセッティングして準備したり、アイコンを急遽透過にしたりとわちゃわちゃ。 ガンホーさんに倣って幸運の値をセッティング! この時はまだ知らなかった、幸運がこの苛酷な登山に置いて最重要ステータスになることを――。

物語の開始地点はニュージーランドのお隣、オーストラリアだった。なんとパーティーはNPCを含めて6人! 結構な大人数。各自自己紹介のターン。医療班の梓さん、スポンサーというかこの山脈の調査にもお金を出しているという「オスコー財団」の御曹司のコージーくん、そしてPLであるガンホーさんを除くと最年長となるリーダーのK2さん。コージーくん、金持ちのボンボンやんけ! 発言はともかく、若い白人男性ということでウィルはちょっと親近感を覚えている。というか繰り返しになるんだけど、ザ・登山家の二人に比べるとなんか「山」そのものに対する動機が弱いなというか、ともすればチャラチャラしてると捉えられかねないような設定だったから「こいつホラー映画とかだったら真っ先に死にそうな陽キャタイプだし、そういう振り切ったキャラ付けでいった方がいいのかな」って自分で思ってたんだけど、お金持ちの御曹司で、恐らく登山経験がまだまだ浅いであろうに、虚勢ともとれる自信に溢れている――そんなコージーくんの存在が「このメンバーに参加するウィルという登山家として、自分がどういうRPをしていくか、彼はどういう考えをしてどんな行動をするのか」ということを固めるきっかけになった。

さて、山脈に挑む際には二つのパターンから装備を決めなければならないそうなんだけども、長旅想定の荷物「キャラバン」から途中で短気登頂を目指す装備に切り替えることも出来る。というわけで相談の上、満場一致で「キャラバン」に決定。 身体のコンディション調整と情報収集。みんな体調はぎりぎり万全に! コンディションを整えて下調べを済ませた後はいざ狂気山脈へ……。

南極へ到着し、目的地を目指して雪上車に乗る一行。NPCに話しかけて親睦を深めたり、情報を収集したり。梓さんはとっても真面目な女性だ。そしてコージーくんに親近感を覚えたウィルは、彼に「家族の人とかは心配しないの?」と質問をすると、なにやら訳アリの様子……家族とうまくいっていないのだろうか? そんな心配をしているのもつかの間、雪上車は目的地に到着。
雪上車を降りた後は犬ぞりで標高4000mまで向かう予定だったのだが、3000m地点で異変が。犬たちが山脈に向かって吠えて始め、見るからに怯えている。このままでは進めないと判断し、ここから歩きで4000m地点まで向かうことに。
さていよいよ登山本番。天候の決定はPL3人の幸運次第ということがここでKPから明かされました。出発することを決めたらナビゲートロールをし、全員成功で1000mを登頂。なお降りるときには判定必要なし。もしナビゲートに失敗したらアクシデントロールを行い、このアクシデントを突破すればナビゲートは成功扱いに。また、途中で判定中断し、停滞選ぶことも可能ということも伝えてもらった。
さて早速天候ロールを行い、なんと初日から猛吹雪。シンプルにやばい。今回PL3人がそんなに幸運高くないのが裏目に出てしまった……。この先、あらゆる局面でこの幸運ルールに苦しめられることになる。
もうね、最初の4000m、5000mに行くまでに満身創痍になったよね……。雪崩にも巻き込まれて全滅も覚悟したしね……。梓さんとガンホーさんがいなかったらマジで詰んでたと思う。そしてナビゲートで匠さんやK2さんがクリティカルを出したときに「プロでは?」とか抜かす私。プロだよ。
さて、ここから少し順調になって6000m地点まで到着。漆黒の山脈を眺めながら「ゴジラの背中みたいだなあ」と言うガンホーさん。匠くんと梓さんは日本人だからゴジラ知ってるけど、西洋人のウィルとコージーはあんまり馴染みが無くて「ああ、あの有名な……? 聞いたことはあるような……」みたいな反応。そして初めて知ったんだけど、羊羹って登山に持ってける携帯食料として有能なんだって。へ~! ってなった。ていうかこのセッションの間、色々と初めて得る知識が多くてやたらと勉強になってそこも楽しかった。ウィルが羊羹を見て「これ動画で紹介しよ~」と興味津々な一方、「もらってやる」とツンデレながらもガンホーさんと段々打ち解けてきたコージーくんが本当に可愛い。ここまでの間で時折険悪な雰囲気になったものの、雪崩などのアクシデントを経て少しずつ距離が縮んできた二人、歳の差もあって本当に微笑ましかった。ああ、ああ……。


7000mともなると悪天候に恵まれすぎてもはや強風ですら穏やかな天気扱いになる一行。この調子で果たして大丈夫なのか。
そして夜にはコージーが一人でテントから抜け出そうとしており、何やら不穏な雰囲気。クトゥルフTRPGのイベントで聞き耳振るときって95割碌なことが起きないので身構えたけど、普通にトイレだったらしい……。なんかこういうパターン珍しいな。聞き耳に成功した匠さん、ガンホーさんとコージーが男三人で連れションに行くの笑う。しかし結果的には連れション(未遂)となる。さて場所は鍾乳洞。またまた三人が聞き耳を振ると、鍾乳洞の出口は谷へと繋がっており、そこには第一次登山隊の遺体が……!
目星に成功したガンホーさんは遺体が異様な状態なことに気付き、また登山隊のメンバーの数からすると二人足りない、そして探している友人である友野さんもいないことが分かる。
苛酷な登山を幾度も経験してきているであろうガンホーさんと匠さんの二人はなんとか平静を保ったけれども、コージーは阿鼻叫喚の光景に気が動転し、二人の制止を振り切って逃走、なんと崖から滑り落ちてしまう! え、ええ……?! これ生きてるの?! ってめちゃくちゃ心配になった。
ガンホーさんたちはトイレに来ただけなので崖を降りるのに必要な装備を持っていなかったことに気付き、応援を読んで駆け付けたK2さんがなんとかコージーくんを救助。しかしケガはともかく、凄惨な状況を目の当たりにした彼の精神は消耗しきっていた……。
さて、騒動の最中、ウィルも件の死体を確認しに。「やめといた方がいい」とは思いつつも、好奇心が勝っちゃったんだと思う。目星は失敗したものの、写真の撮影は成功。はい、無事コージーに続いて発狂しました☆
発狂の内容としては「周囲の人々を自分のバックストーリー上の大事な人々だと思い込む」こと。
その場でエア配信を始めるウィル。一見害のない発狂と思いきや、割と怖がられてて笑ってしまった。なんならエンディングでもNPCというかKPから言及されてしまった。

さて、状況を確認したところで、このまま登頂を目指すかどうか再度お互いに話し合う。探索者たちはこのまま山頂を目指すことに迷いはないが、問題はコージーくん。いつもの強気な態度もどこへやら、すっかり怯えている。しかしここまで彼と少しずつ絆を育んできた探索者たち、特にガンホーさんは「ここに残しておくより、連れていきたい」と、なんとか三人で説得に臨む! いや、ここ、マジで熱かった……。そもそもこの山、ここに残しておいたところでやべー生物が襲いに来ないかも分からんし。置いていった結果死亡なんてことになったら、探索者たちは後悔してもしきれなかっただろう。結果、なんとか説得に成功し、この後も引き続き、コージー君も含めたフルメンバーで登頂に臨むことになる……と思いきや、今度は9000mに行くか、という地点でK2さんが高山病を発症し、彼の容体を診るために梓さんも離脱。今までキャンプ地と彼女の医療技術によって何とかなってる分も大きかったため、ここからいよいよ冒険も大詰めというところか。K2さんの体が心配だが、残された日数も少ない中、もはや「登らない」という選択肢は我々になかった。
さてさて、ついに9000mへと到達! 後から思ったけど、先に9000mまで登っちゃえば後から判定無しで降りることも出来るんだから先に踏破しちゃった方が正解だったのかもしれない……!
それはさておき、ここでガンホーさんが探していた友野さんと再会するが……。残念ながら彼はすでに亡くなっていた。ぼろぼろのピッケルにザック、食料と一緒に手記とネックレスを発見。 
彼の残した手記から、第一次登山隊は、山頂を踏むことなく壊滅したこと、そして多くの者が未知の生物に襲われて発狂し、亡くなったこと。最後に残った彼とパートナーの2人がなんとか登頂を試みたものの、最後に待ち構えていた壁を登りきることができず、負傷して動けなくなったことが分かった。
この後に控えている最後の「大黒壁」について詳細な情報が記されており、これが無ければ間違いなく探索者たちも同じ運命を辿っていただろう。手記の最後は、「山頂から目を離すことが出来ない」という記述と共に、ガンホーさんに向けたメッセージで締めくくられていた。

さあなんとここにきて快晴無風の素晴らしい天気を引き当てる! すげえドラマチック。装備も軽量なものに切り替え、最後の大一番へ。皆に比べてステータスが低いコージーもダイスロール成功してるし、マジで映画みたいな展開だ……。オタクさんがご自身の日記でこのへん書いてらしたけど、ダイスの出目も会話に活かすのレベル高すぎたな?! ロールプレイの参考になる。なんかもう、なにか神がかった何かが降りてきたんじゃないか? って流れ。
序盤のアクシデントや雪崩地獄が嘘のように後半はサクサク進み、無事登頂に成功! これも天気のおかげではあるのだが、本当にここにきて! って感じ。皆で譲り合いが発生した結果、みんなで第一踏。なんとここは10363m。記念写真を撮ろうとしたけれど、タイミングの問題か、二枚ともブレた写真が出来上がった。でも最高の思い出になった。
無線で梓さんに連絡を取ると我が事のように喜んでくれて嬉しさが倍増。K2さんも無事だそう。さあここでそろそろ下山、するはずだった。

ここは狂気山脈である。
ここは、狂気山脈である。
探索者たちをタダで帰すにはいかないとばかりに地形の変動が発生! もと来たルートが使えないという緊急事態に陥る。ガンホーさん、コージーくん、匠さん、そしてウィルの4人は協力してここから脱出するために、まず辺りの様子を確認することにた。手始めにまず 断崖部を覗き込むと……。

謎の生き物が無数に這いまわっている姿を目の当たりにし、無事SANチェック。
想像したときにキモ過ぎて「モキモキモ!!!!!モキモキモ!!!!!(おい! おい! おい! おい! 言葉を慎めよ……!)」って脳内に流れてきた。Don't stop! Don't stop!
このままでは4人とも襲われて第一次登山隊の二の舞になることは目に見えているので、崖の傍に発見したうろの中へと避難。しかし妙に生温かく、湿っている空間、そして手を当てて感じる、呼吸のような動き……。そう、探索者たちは気付いてしまったのだ、この狂気山脈そのものが巨大な生物なのだという、あまりにも恐ろしい事実に……。

いや、何がヤバいって、ガンホーさんが何気なく発した「ゴジラの背中みたいだなw」が盛大なフラグになるだなんて誰も思ってないじゃないですか。コージーくんはとうとう不定の狂気に突入するし、すっげえヤバい極限状況なのにPLとしてのオタクさんとカメさんと私はとんでもないフラグ回収に爆笑してた。このセッションもう芸術じゃないですか?!
さて、このまま探索を続けたとして目ぼしいものは得られるのか? PL同士で相談の末、もはや原形を留めていない、この長い旅の発端ともなった航空機からゲットした人数分のパラシュートを使って脱出することに。こんな危ない山にこれ以上いられるか~!(フラグ)

さあ飛ぼう、としたところで……。

最後の最後で、ここまで来たというのに、コージーくんの、SANが……。

とうとう正気を失ってしまい、亡くなった友野さんと同じように「ここから離れたくても離れられない」と山に憑りつかれてしまった。しかしガンホーさんも譲らない。「ぶん殴ってでも連れて帰る」と拳を振るい、なんとかコージーくんを抱える。
このシーン、本当に泣けるのにKPとPLのやり取りは「暴力は格闘ですか?」とか「やはり暴力はすべてを解決する……!」とかIQ3の会話になってたのが本当に酷くて大好き。なまじガンホーさんのガタイが良すぎてコージーくんの物理的な体力も心配だったなここ!
しかもこれ、パラシュートで飛んだだけじゃまだ終わらなくて、なんと狂気山脈との最後のバトルというかチェイスが発生するんですよ! もう勘弁してくれ~! しかも匠さんも跳躍に失敗したところで山脈はイクストリーム成功。岩肌に激突して大怪我ならまだしも普通に死亡の危険性すらある展開になって、このまま万事休すか……って絶望しかけたけど、オタクさんの提案でなんと匠さんは幸運をガッツリ消費して、ダメージを軽減し無事に生還! あぶねええ~!
なんとか本当に命からがら、でも生きている。生きている。4人は。生きて帰って来たのだ、狂気山脈から……。

ここまでの展開が展開だったから、降りた先で待っていた救助隊とか、みんな最初信じることが出来なかったんじゃないかな。夢なんじゃないか、また山の見せている幻覚じゃないかって。ここまでブロッケン現象だとか、とてもこの世のものとは思えない遺跡の蜃気楼だとかを見てきたんだから。隊員から声をかけられてようやく現実に戻ってきたかもしれない。
コージーくんを彼らに預けた後、ガンホーさんが再び山へと向かい、梓さんとK2さんも無事下山することが出来た。

めでたしめでたし、とはいかないエンドだった。だってコージーくんの精神が崩壊しちゃったから……。
それでもいつかコージーくんの元気が回復するんじゃないか、と願っているガンホーさんの想いがマジで切なかった。

最後に各々これからどうしたか後日談を語ったんだけど、そもそもウィルは友人から失踪した航空機の噂を聞いてほぼ野次馬根性で首を突っ込んだ割と命知らずなとこのある野郎なんだけれども、(だからマジでオーストラリアでのメンバー顏合わせの時、実績も動機も真っ当な人たちに囲まれて内心では冷や汗かいてたと思うし、コージーくんの存在にどこかで安心していたとも思う)今回のことは動画のネタにはしなかった。しんどくもなるだろう、一緒に飯食ったり雪上車に乗ったり雪崩に遭ったりしてきた仲間が、あんな状態になったことを思うと。彼のデスクには山頂で撮ったブレブレの写真がずっと飾られていることだろう。あとこの後も匠さんやガンホーさんとは交流が続いていて欲しいな。時々ニュージーランドの美しい風景の写真を送ったりしてると思う。

セッションの後、カメさんとオタクさんはまだディスコでKPのスイさんと共にネタバレ含めてシナリオ解説を聞いたり雑談をしていたそうなんだけれども、私は就寝してしまった。ただこんな興奮状態で寝られるはずもなく、YouTubeで他の人の狂気山脈セッションリプレイを午前3時くらいまで眺めていた。でもそこで気付いた。私たちの狂気山脈は誰にも再現できないし、コージーくんのifの未来を見たところで私たちのセッション内容は変わらないんだよな……。
想い出を噛み締めて、外が少しずつ明るくなってきたことを感じつつ、布団を被って寝た。

ひとまずここで区切るつもりだけれども、また時間あるときに追記や修正をするかもしれない。正直まだまだ書き足りないことがたくさんあるので……。


おしまい